2024年、読売ジャイアンツの船迫大雅投手がセ・リーグ新人王を獲得し、野球界に大きな衝撃を与えました。
28歳での受賞は異例中の異例であり、その背景にある複数回の指名漏れというドラマチックなストーリーが注目を集めています。本記事では、船迫投手の評価と指名漏れの全貌に迫ります。
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | 船迫 大雅(ふなばさま ひろまさ) |
所属チーム | 読売ジャイアンツ |
背番号 | 58 |
生年月日 | 1996年10月16日(28歳) |
出身地 | 宮城県刈田郡蔵王町 |
身長 | 174 cm |
体重 | 80 kg |
ポジション | 投手 |
投打 | 右投左打 |
経歴 | 聖光学院高 – 東日本国際大 – 西濃運輸 – 巨人(2023年〜) |
ドラフト | 2022年ドラフト5位 |
プロ初登板 | 2023年3月31日 |
タイトル | 新人王(2024年) |
2025年年俸 | 5600万円 |
主な球種 | スライダー、ストレート |
船迫大雅の評価
投球スタイルと実力
船迫大雅投手は右のサイドスロー投手として、独特の投球フォームから繰り出される球筋が特徴です。打者からは見づらく、タイミングを合わせることが困難なため、対戦相手を翻弄します。
最大の武器はストレートで、最速150キロを誇り、回転数は最大2700rpmに達することがあります。これは元阪神タイガースの藤川球児投手と同程度の数値であり、打者の手元で伸びるような軌道は打者に大きな威圧感を与えています。
次に特筆すべきは「魔球」と称されるスライダーです。
2024年シーズンの投球全体の50.4%を占めるこの球種は、鋭く横に変化し、特に右打者に対して非常に効果的です。セイバーメトリクスの指標「Pitch Value」でも高い評価を受けており、打者を打ち取る決め球として機能しています。
このほかシンカーも持ち合わせており、近年では左打者対策としてシュートやジャイロカットの習得にも取り組んでいます。球種のバリエーションが増えることで、さらなる成長が期待されています。
2024年の輝かしい成績
2024年シーズン、船迫投手は51試合に登板し、4勝0敗22ホールド、防御率2.37という素晴らしい成績を収めました。敗戦を喫することなく、多くのホールドを記録したことは、彼が重要な局面で安定した投球を見せていた証拠です。
シーズン序盤には驚異的なWHIP(投球回あたり与四球・被安打数合計)0.33を記録し、6試合に登板して無失点を続けるなど、他の試合でもほとんど走者を出さない投球で巨人ファンから絶大な信頼を得ました。
また、チーム唯一となる全143試合でのベンチ入りを果たし、その耐久性とチームへの貢献度の高さを示しました。この安定感がチームのセ・リーグ優勝に大きく貢献したことは間違いありません。
前年のルーキーイヤーとなった2023年シーズンも、36試合に登板し、3勝1敗8ホールド、防御率2.70という好成績をマークしており、1年目からプロのレベルに適応し、チームに貢献していた様子が伺えます。
専門家からの評価
野球解説者の野口茂樹氏は「今年の巨人にとって欠かせない活躍をした」と船迫投手を高く評価しています。彼の精神的なタフさや努力家な姿勢も評価されており、シーズンを通して全143試合でベンチ入りし、睡眠管理など自己調整にも力を入れるプロ意識の高さが際立っていると言われています。
巨人軍の水野雄仁スカウト部長も「力強いストレートを投げていた。現場から”サイドが欲しい”と要望があったので、いの一番に船迫投手を挙げさせてもらった」と語り、その能力の高さを裏付けています。
28歳という「遅咲き」で新人王を獲得した背景には、長年の努力と諦めない姿勢が支持を集めており、「苦労人」「見ていて気持ちのいいピッチャー」と称されることも多いです。
船迫大雅の指名漏れ

3度の指名漏れの経緯
船迫投手がプロの道を歩むまでには、驚くべきことに計3回もの指名漏れを経験しています。
1回目は高校卒業後です。聖光学院高校時代は3年夏の甲子園でエースとしてベスト8に貢献しましたが、プロからの指名はなく、東日本国際大学へ進学しました。
2回目は大学卒業時です。東日本国際大学では南東北リーグで通算34勝を挙げる活躍を見せましたが、4年時の2018年ドラフトで指名漏れを経験しました。
同期の粟津凱士が西武ライオンズから指名を受ける中、自身の名前が呼ばれなかった悔しさは計り知れないものがあったでしょう。
その後、社会人野球の西濃運輸に進み、そこでさらに実力を磨きましたが、ここでも2度の指名漏れを経験しました。3度目の指名漏れ後には「野球人生を終えよう」と覚悟したと言います。
しかし諦めずに練習を続け、2021年のドラフト会議後に行われた都市対抗野球大会では、最速150キロをマークする圧巻の投球を披露。翌2022年の都市対抗予選でも防御率0.52という驚異的な成績を残し、ついに読売ジャイアンツから5位指名を受け、26歳で念願のプロ入りを果たしました。
指名漏れの理由を徹底分析
なぜこれほどの才能が長年見過ごされてきたのでしょうか。
高校卒業時にプロのスカウトから注目されなかった理由として、当時体が細く、ストレートの球速も135キロ程度であったことが挙げられます。大型投手が重視される傾向の中で注目されにくかったのです。
東日本国際大学に進学後、彼は着実に成長を遂げ、ストレートの球速も140キロ台前半まで向上し、スライダーも高い評価を得るようになりました。
大学4年時には大学選手権でも勝利投手となるなど実績も残しましたが、大学生としてはストレートの球速が突出していなかったため、ドラフト指名には至りませんでした。
社会人野球に進んでからは、1年目に右肘を故障して出遅れたこと、2年目の2020年にはコロナ禍で公式戦が減少し、スカウトへのアピールの機会が少なかったことなど、不運な要素も重なりました。
3年目の2021年には好成績を残したものの、指名には至りませんでした。この年は東京オリンピックの影響で都市対抗野球大会の開催が例年よりも遅れ、ドラフト会議後に開催されたため、彼が好投を見せても指名には繋がらなかったという背景がありました。
指名漏れを乗り越えた転機
2021年のドラフト会議後に行われた都市対抗野球大会で、船迫投手は最速150キロをマークする圧巻の投球を披露しました。翌2022年には西濃運輸の社会人4年目となり、都市対抗予選で防御率0.52という驚異的な成績を残します。
この活躍が読売ジャイアンツのスカウトの目に留まり、2022年秋のドラフト会議で5位指名を受け、26歳でようやくプロ入りを果たしました。大学4年時と社会人時代に計2度の指名漏れを乗り越えた末のプロ入りであり、その後の活躍から「リベンジを果たした」とも言われています。
船迫大雅の強み評価と課題

注目すべき強み
船迫大雅の最大の強みとして挙げられるのは、そのタフネスと耐久力です。
2024年シーズンには、チーム最多となる51試合に登板し、これはリーグでも上位に入る記録です。2023年シーズンも、巨人軍の投手で唯一開幕からシーズン終了まで一軍に帯同し続けました。この驚異的な登板数は、彼の身体的な強靭さと、連投にも耐えうる回復力の高さを物語っています。
次に、彼のストレートの質の高さも大きな武器です。最速150キロという球速に加え、ボールの回転数が非常に高く、ピーク時には2700rpmに達することもあり、これはかつて「火の玉ストレート」と呼ばれた元阪神タイガースの藤川球児氏と同程度の数値です。打者の手元で伸びるような軌道は、たとえ球速表示以上に打者に威圧感を与えます。
そして、彼のスライダーの有効性も見逃せません。2024年の投球の半数以上(50.4%)を占めるこの球種は、鋭く横に変化し、特に右打者に対しては非常に効果的です。
打者の体から逃げるような軌道は、空振りを誘うだけでなく、打ち損じを誘い、凡打の山を築く要因となっています。
さらに、精神力の強さと冷静さも彼の大きな強みです。どんなピンチの場面でも動じることなく、度胸のある投球を見せると評されており、逆境に強いメンタルの持ち主であることが伺えます。
高校時代からエースとして数々のプレッシャーの中で培ってきた精神力は、プロの世界でも彼の大きな支えとなっています。
課題と改善への取り組み
船迫大雅の明確な弱点として認識されているのは、左打者への対応です。過去のシーズンでは、左打者に対する被打率が高く、左打者が続く場面では他の投手に交代することがありました。これは、彼の投球フォームや球種との相性の問題が考えられます。
この課題を克服するために、船迫投手はツーシームやジャイロカットといった新たな球種の習得に積極的に取り組んでいます。
2025年のオープン戦では、左打者対策として新球種を試すなど、積極的に課題克服に取り組む姿勢も見せています。ある試合では、左打者に対してツーシームを効果的に使用し、課題克服への手応えを掴んでいる様子も報じられています。
また、シーズン終盤になると、わずかながらパフォーマンスが低下する可能性も指摘されています。具体的なデータとして明確な数値の悪化は見られないものの、制球力の微細な乱れが原因ではないかと分析されています。
長丁場のシーズンを戦い抜く上での体力的な課題、あるいは疲労の蓄積による影響も考えられ、これらの課題に対して睡眠管理など自己調整に力を入れて改善を図っています。
船迫大雅から学ぶこと

「遅咲き」という希望
28歳での新人王獲得はプロ野球史上でも異例の「遅咲き」です。船迫投手自身は「年齢はただのアクセサリーなので若さ全開でいきます!」と前向きに語り、年齢にとらわれない可能性を示しています。
彼の姿勢は、単なる野球の話を超えて、「年齢」という概念に縛られがちな現代社会において、新たな挑戦への勇気を与えてくれます。何歳であっても、諦めずに努力を続ければ、夢は叶うという希望を体現しているのです。
諦めない心
3度の指名漏れという挫折を乗り越え、26歳でようやく掴んだプロの夢。そして28歳での新人王獲得。この劇的なストーリーは「諦めなければ夢は叶う」という力強いメッセージを私たち全員に届けています。
船迫投手は新人王受賞時に「素直にうれしい気持ち」と語り、支えてくれた周囲の人々、特に両親への感謝の思いを述べています。シーズンを通して全試合ベンチ入りできたことについても触れ、苦しいことも多かったが、リーグ優勝に貢献できたことを喜んでいました。この謙虚な姿勢と感謝の気持ちは、彼の人間性の高さを表しています。
地元・宮城県蔵王町の誇り
船迫投手は故郷・宮城県蔵王町の誇りとして、多くの地元ファンから熱い声援を受けています。「町の思いも背負って」活躍する姿は、地方出身者の励みとなっています。
また、プロ入り前に所属していた西濃運輸の佐伯尚治監督は、当時から船迫のプロへの強い思いを知っており、彼の能力を高く評価し、プロの世界での活躍を期待していました。このように、船迫投手は自身を支えてくれた人々の期待に応え、恩返しをしている姿が印象的です。
まとめ:船迫大雅の評価や指名漏れとは?驚きの新人王への道のり
船迫大雅投手の評価と指名漏れの物語は、プロ野球界における「見過ごされた才能」と「諦めない心の勝利」という普遍的なテーマを浮き彫りにしています。
2024年シーズンの51試合、4勝0敗、22ホールド、防御率2.37という数字は、彼の技術的な評価を裏付けるものです。特に、2700rpmに達する高回転のストレートと「魔球」と称されるスライダーは、長年の試行錯誤が生んだ結晶と言えるでしょう。
3度もの指名漏れを経験しながら、26歳でプロ入りし、28歳で新人王に輝いた彼の軌跡は、どんな逆境にも負けない強さの象徴です。指名漏れという長いトンネルを抜け、28歳で新人王を獲得した彼は、短期的な結果ではなく、持続的な努力が報われる瞬間を体現しています。
船迫投手の歩みは、評価されなくても自分を信じ続けることの大切さを教えてくれます。2025年シーズン以降も、読売ジャイアンツの勝利の方程式を支える重要な存在として、彼の活躍から目が離せません。
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