読売ジャイアンツの守護神として圧倒的な存在感を放つ大勢(翁田大勢)投手。
その魅力は、なんといっても威力抜群のストレートと鋭く落ちるフォークボールです。本記事では、大勢投手のピッチングの核心に迫ります。いつから現在の投球フォームになったのか、サイドスローなのかスリークォーターなのかというフォームの詳細、なぜあれほど速いボールを投げられるのか、フォークボールの握りや特徴について、深く掘り下げて解説します。
アマチュア時代からの変遷、プロ入り後の進化、そして専門家による分析も交えながら、大勢投手の強さの秘密を解き明かしていきます。
大勢のサイドスローいつから?スリークォーター?なぜ速い?
大勢投手の投球フォームは、彼の投手としてのキャリアの中で試行錯誤を経て形成されてきました。
大学時代のフォーム模索と故障
関西国際大学時代、大勢投手は右肘の故障に悩まされました。大学3年秋に右肘の炎症、そして大学4年春の5月には右肘の疲労骨折を経験しています。
これらの故障を乗り越える過程で、彼は自身の投球フォームを見直すことになります。それまでは腕の力に頼りすぎる傾向がありましたが、上半身をあえて制御し、より効率的な投球動作を追求する練習を重ねました。このフォーム修正が、後の飛躍へと繋がっていきます。
サイドスローかスリークォーターか?その特徴
大勢投手の投球フォームは、一般的に「サイドスロー」または「スリークォーターとサイドスローの中間」と表現されることが多いです。純粋なオーバースローではなく、腕が横に近い角度から出てくるのが特徴です。
- 専門家の見解: ある分析では、スリークォーターよりもやや肘の位置が低い、つまりサイドスロー寄りのフォームとされています。また、一般的なサイドスローよりも腕の角度が少し高めであるため、「スリークォーターアーム」とも形容できるという意見もあります。元プロ野球選手の岩隈久志氏は、大勢投手のフォームをスリークォーターと評し、広いステップ幅でも後ろの右足がプレートから離れない点や、18.44メートルの距離を少しでも短くしようとする工夫が見られると指摘しています。
- 変化の時期: 大学4年時の右肘疲労骨折後、投球フォームを見直し、右横手気味から150キロ台の剛速球を投げ込むまでに急成長したと報じられています。スカウトからは、サイド気味のスリークォーターから肘のしなりを使う独特なフォームが、過去の肘の故障歴の一因となった可能性も指摘されていました。
プロ入り後もフォームの微調整は続けられており、ゲーム「プロ野球スピリッツ」のフォーム一覧では「翁田大勢(旧フォーム)」と「翁田大勢」の二種類が収録されていることからも、その変遷がうかがえます。現在のフォームは、打者にとって球の出所が見えにくく、かつ威力のあるボールを投げるための合理的な形と言えるでしょう。
なぜ速い?160キロに迫るストレートのメカニズム
大勢投手の最大の武器は、最速160km/hに達するストレートです。プロ入り後も球速は進化を続け、オープン戦で155km/h、公式戦では158km/h、さらには98.8mph(約159km/h)を記録したこともあります。この驚異的なスピードは、いくつかの要因によって生み出されています。
ヒールアップ投法の導入
プロ入り後、大勢投手は「ヒールアップ投法」に着手しました。これは、投球動作の中で軸足のかかとを一度上げてから下ろす動作を加えるもので、読売ジャイアンツのOBである江川卓氏も採用していた投法です。
このヒールアップにより、体重移動がスムーズになり、腕の振りが加速し、結果として球速アップに繋がるとされています。大勢投手はこの投法を取り入れたことで、ストレートの球速を159キロまで向上させたと報じられています。このフォームを安定させるためには強靭な下半身が必要であり、日々のトレーニングの成果が表れています。
天性の腕のしなりと下半身主導のフォーム
岩隈久志氏は、大勢投手の腕のしなりについて「すごく柔らかい。これは天性のモノ」と高く評価しています。また、「下半身の力をうまく上半身へと連動する素晴らしい投球フォーム」とも述べており、全身を使った効率的な力の伝達が速球を生み出す要因であると分析しています。大学時代に腕の力だけに頼る投球を見直した経験が、この全身を使ったフォームの確立に繋がったと考えられます。
独特のシュート回転
大勢投手のストレートは、ナチュラルにシュート回転する(わずかに右打者の内角方向へ変化する)軌道を描くことが特徴です。このシュート回転するストレートは、打者にとっては非常に打ちづらく、芯を外しやすいため、空振りを奪ったり、詰まらせたりするのに有効です。意図して投げ分けているかは不明ですが、真っ直ぐ伸びてくる時とシュートしてくる時があり、これが被打率の低さ(70%以上の投球割合にもかかわらず1割台)に貢献していると分析されています。
決め球フォークボール:その握りと軌道
ストレートと並ぶ大勢投手のもう一つのウイニングショットがフォークボールです。
魔神・佐々木主浩氏からの伝授と握りの工夫
2022年の春季キャンプ中、大勢投手は「ハマの大魔神」として知られる佐々木主浩氏からフォークボールの指導を受けました。
佐々木氏からは、フォークボールの確率を上げるための投げ方についてアドバイスを受け、「ハマった感触はありました」と手応えを語っています。
また、プロ入り前の年末には、フォークボールの握りをそれまでの3本指から4本指に変えたところ、自身の中でしっくりきたと明かしています。この変更により、落ち幅や落ち方が理想に近づいたとのことです。
不規則な変化と揺れる軌道
大勢投手のフォークボールは球速がありながらも回転数が少ないため、不規則に落ちるのが特徴です。時には揺れるような変化も見せ、打者を幻惑します。ストレートが非常に強力であるため、このフォークボールとのコンビネーションは抜群の相性を誇ります。
縦の変化が強いため、一般的にフォークが通用しにくいとされる左打者に対しても有効な球種となっています。落差も十分で空振り率も高く、まさに決め球と呼ぶにふさわしいボールです。スカウトからは、少しシュート気味に右にスライドしながら落ちる軌道と評されたこともあります。
まとめ:大勢のサイドスローいつから?スリークォーター?なぜ速い?フォーク握り
大勢投手はルーキーイヤーからクローザーとして素晴らしい成績を残し、セ・リーグ新人王に輝きました。しかし、プロ2年目以降は右上肢のコンディション不良や右肩の違和感などで離脱する期間も経験しています。
大学時代にも肘の故障歴があるだけに、年間を通して高いパフォーマンスを維持するためのコンディショニングが今後の大きな鍵となります。
それでも、彼の持つポテンシャルは計り知れません。独特のフォームから繰り出される剛速球と魔球フォーク、そして多彩な変化球を武器に、今後も読売ジャイアンツの絶対的守護神として、さらには日本を代表するクローザーへと成長していくことが大いに期待されます。その投球から目が離せません。
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